エネルギー価格が8割超に影響し約1割は深刻
昨今のエネルギー価格について、「8割を超える中小企業の経営に影響あり」という調査結果を日本商工会議所(以下、日商)と東京商工会議所(以下、東商)が、2025年7月17日に発表した(図1)。約1割は「影響は深刻で、今後の事業継続に不安」を抱えているという。
図1 エネルギー価格の経営への影響
出所 日本商工会議所 調査・研究 2025年7月17日、「「2025年度 中小企業の省エネ・脱炭素に関する実態調査」の集計結果について」
価格転嫁を約半数がする中で医療・福祉業の7割できず
日商と東商による「2025年度 中小企業の省エネ・脱炭素に関する実態調査」は、中小企業の脱炭素に関する取り組みの状況や課題、政府などに期待する支援内容を調査したもの。2025年4月24日から5月27日にかけて全国の中小企業を対象に実施し、1828社の回答があった。
同調査によれば、昨今のエネルギー価格について、中小企業の85.2%が「経営に影響あり」と回答した(図1)。「影響は深刻で、今後の事業継続に不安」と回答した企業が7.9%おり、依然として多くの企業が厳しい状況に置かれていることが示された。特に影響が大きい業界である医療・福祉業(18.5%)、宿泊・飲食業(17.9%)、運輸業(14.3%)、燃料小売業を除いた小売業(11.9%)は、「影響は深刻で、今後の事業継続に不安」の回答が10%を超えた。
この状況への対策(直近1年以内)として最も多かったのは、「自社製品・サービスの値上げ(エネルギー価格上昇分の価格転嫁)」で34.2%であった。次いで、「運用改善による省エネの推進」(27.7%)、「省エネ型設備への更新・新規導入」(25.1%)が続いた(図2)。
図2 エネルギー価格の転嫁状況
出所 日本商工会議所 調査・研究 2025年7月17日、「「2025年度 中小企業の省エネ・脱炭素に関する実態調査」の集計結果について」
エネルギー価格上昇分の価格転嫁について、約半数(49.6%)の企業が「転嫁できている」(全て・概ね・一部)と回答している。一方で、「ほとんど・全く転嫁できてない」という回答が、医療・福祉業では70.3%、燃料小売業を除いた小売業では64.5%と高く、特に医療・福祉業は、「全く転嫁できていない」との回答が48.1%と顕著に高かった(図3)。
図3 業界ごとの価格転嫁状況
出所 日本商工会議所 調査・研究 2025年7月17日、「「2025年度 中小企業の省エネ・脱炭素に関する実態調査」の集計結果について」
約2割に取引先から脱炭素の要請
脱炭素に関する取り組みについて、全体の68.9%が何らかの取り組みを実施していると回答した。具体的な取り組み内容としては、「省エネ型設備への更新・新規導入」(35.7%)が最も多く、次いで「運用改善による省エネの推進」(34.5%)、「エネルギー使用量・温室効果ガス排出量の把握・測定」(26.0%)となった(図4)。
図4 脱炭素に関する具体的な取り組み内容
出所 日本商工会議所 調査・研究 2025年7月17日、「「2025年度 中小企業の省エネ・脱炭素に関する実態調査」の集計結果について」
脱炭素に関する取り組みが最も進んでいるのは、製造業で、「エネルギーの使用量・温室効果ガス排出量の把握・測定」に44.4%が取り組む。進みが遅いのは、医療・福祉業で、「省エネ型設備への更新・新規導入」は14.8%にとどまる。
脱炭素に取り組む理由・目的で、最も多いのは「光熱費・燃料費の削減」(76.5%)で、それに「企業としての評価や知名度の維持・向上」(32.1%)が続いた。
取引先から脱炭素に関する要請を受けて取り組む企業もおり、21.3%の企業が要請を受けていることが明らかになった。具体的な要請内容は、「温室効果ガス排出量の把握・測定」(10.0%)が最も多く、「温室効果ガス排出量の具体的な削減目標設定・進捗報告」(7.3%)、「電力やガスの再エネ化(カーボン・オフセット含む)」(5.0%)と続く(図5)。
図5 取引先からの脱炭素に関する要請内容
出所 日本商工会議所 調査・研究 2025年7月17日、「「2025年度 中小企業の省エネ・脱炭素に関する実態調査」の集計結果について」
要請を受けたうち取引先から技術や資金などの支援を受けている企業は25.9%であり、要請のみで具体的な支援が伴っていないケースが多い実態が浮き彫りとなった。支援内容としては、「技術的支援」が19.2%で、「金銭的支援」は5.4%にとどまっている。
今後実施したいと考えている脱炭素の取り組みについては、「省エネ型設備への更新・新規導入」(40.8%)、「運用改善による省エネの推進」が約3割(30.1%)、「SDGsに関する取り組み」も約3割(28.7%)と続く。
脱炭素に取り組む上でのハードルについては、64.5%が「費用・コスト面の負担が大きい」を、35.8%が「マンパワー・ノウハウが不足」を挙げる。取り組みを行っていない企業に限定すると、「メリット・意義が感じられない」という課題が31.5%に上った。
脱炭素に取り組む際の相談先は、「設備機器メーカー」(31.4%)、「電力・ガス会社」(28.7%)、「取引先(仕入先、受注・納入先)」(18.3%)の順となっている。
参考サイト
日本商工会議所 調査・研究 2025年7月17日、「「2025年度 中小企業の省エネ・脱炭素に関する実態調査」の集計結果について」
東京商工会議所 最新の調査結果 2025年7月17日、「2025年度 中小企業の省エネ・脱炭素に関する実態調査」の集計結果について」