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CO2を吸収するコンクリート被覆シート、積水化学と五洋建設が開発

貼付後もコンクリートの状態を目視可能
2025/08/19
(火)

「CO2吸収材含有表面被覆シート」を共同開発

 積水化学工業株式会社(以下、積水化学)と五洋建設株式会社(以下、五洋建設)は、
桟橋などのコンクリート構造物を被覆して劣化を防ぐ「CO2吸収材含有表面被覆シート」を共同開発した。同シートは、CO2を吸収する機能(図1)と、高い透明性によって被覆後も状態を目視で確認でき、従来工法の課題を解決したという。2025年度に実証試験を目的とした試験販売を予定している。積水化学が2025年8月18日に発表した。

図1 積水化学と五洋建設が開発したCO2吸収材含有表面被覆シート設置下での経時でのCO2濃度変化

出所 積水化学工業株式会社 ニュース 2025年8月18日、「コンクリート劣化対策向け「表面被覆シート」を開発」

粘着層にはCO2吸収材で被覆による吸収機能低下を補完

 港湾施設の桟橋など、コンクリート構造物の劣化対策には、二酸化炭素や塩化物イオンなどの侵入を防ぐため、有機系被覆材で塗装する工法が多く採用されてきた。しかし、特に桟橋の下面などでは、吊り足場といった大掛かりな仮設が必要になる、潮位によって作業時間が制約される、塗装後に乾燥時間が必要となるなど、施工面での課題があった。

 さらに、被覆材で覆うと内部のコンクリートのひび割れなどの劣化状況が確認しづらくなるという維持管理上の問題や、被覆によってコンクリートが本来持つCO2吸収機能が低下してしまう。

 CO2吸収材含有表面被覆シートは、厚膜で柔軟な設計の特殊粘着層により、コンクリートのような粗面にも優れた接着性を持つ。実際に、シートの端に強力な水流を当てる耐剥がれ試験を行ったところ、剥がれは確認されなかった(図2)。そのため、下地処理剤であるプライマーが不要となる。粘着層にはCO2吸収材を添加しており、被覆によるコンクリートのCO2吸収機能低下を補う。密閉空間での試験では、20時間余りで粘着層の単位体積あたり18~20kgのCO2を吸収した。

図2 CO2吸収材含有表面被覆シートの耐剥がれ試験方法


出所 積水化学工業株式会社 ニュース 2025年8月18日、「コンクリート劣化対策向け「表面被覆シート」を開発」

 透明性が高く、貼付後もコンクリートの状態を目視で確認できる(図3)。これにより、ひび割れの発生といった異常を早期に発見して迅速に対応できる。また、最外層の耐候性フィルムで、屋外の過酷な環境下でも長期間の使用に耐えるという。

図3 CO2吸収材含有表面被覆シートの有無による視認性比較


出所 積水化学工業株式会社 ニュース 2025年8月18日、「コンクリート劣化対策向け「表面被覆シート」を開発」

 事前検証では、五洋建設技術研究所守衛室の壁面に同シートを適用し、作業性や貼付後も透明性の維持を確認した(図4)。

 積水化学は粘着配合やシート加工の技術を持ち、五洋建設は海洋土木分野での豊富な維持管理の知見を持つ。両社の技術・知見を活用し、CO2吸収材含有表面被覆シートを活用した。今後、両社は、同シートを土木および建築分野のコンクリート構造物にも適用する。


参考サイト

積水化学工業株式会社 ニュース 2025年8月18日、「コンクリート劣化対策向け「表面被覆シート」を開発」
 

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