LCA算定ソフトでエンボディドカーボン計算を精緻化と効率化
大東建託株式会社は、建築物のライフサイクル全体で排出されるCO₂(二酸化炭素)を算定するためのソフトウェアの本格的な活用を、2025年10月に開始する(図1)。建物の建設、維持管理、解体の段階で排出される温室効果ガス「エンボディドカーボン(Embodied Carbon)」の計算の精緻化と効率化を図るという。2025年9月30日に発表した。
図1 大東建託が活用するLCA算定ソフト「One Click LCA」の画面イメージ
出所 大東建託株式会社 ニュースリリース 2025年9月30日、「LCA算定の精緻化・効率化でCO₂排出量の低減を加速」
算定モデルを16種類に拡大、年間供給建物の約9割をカバー
大東建託は、2014年から建物のLCA算定を始めており、これまでに一般的な木造アパート、CLT造マンション、RC造マンションの3種類の基準モデルをもとに、エンボディドカーボンの概算算出を実施してきた。2022年には、より精緻な算定のため、LCA算定ソフト「One Click LCA」(フィンランドのOne Click LCA製)を導入した。今回、同ソフトの本格的な活用を開始する。
同ソフトで、建築物の部位や資材ごとのCO2排出量をグラフで可視化し、環境負荷の高い工程や部位、資材に加え、削減効果の大きい領域を分析する。また、算定基準モデルを構造・用途・間取りなどで分類した主要14商品に基づく16種類に拡大し、同社が1年間に供給する建物の約9割を算定対象にする。さらに、木材などの炭素固定量も自動で評価し、木造建築物の環境価値を客観的に示すことにもつながるとする。
また、サプライチェーンにおける排出量のScope3、中でも原材料の調達などを含む「カテゴリー1」のCO₂排出量を算定する。算定結果をもとに、サプライチェーン全体での排出量削減に向けた具体的な取り組みを強化できるとしている。
今後、精緻化したLCA算定データをもとに、CO2排出量の低減を意識した設計や資材選定を推進する。さらに、環境性能が第三者によって検証されたEPD(Environmental Product Declaration)注1認証を取得した資材・設備の採用を進めていく方針だ。
大東建託によると、国内のCO₂排出量のおよそ4割を占める建築物分野では、持続可能な建築への移行が急務となっている。2028年には建築物のライフサイクル全体におけるCO2排出量の算定・評価が制度化される見込みであり、業界全体での対応が求められている。しかし、国内ではLCAに関する標準化されたデータベースの不足や、評価基準が複数存在するといった課題があり、評価結果の統一的な比較が困難な状況にあった。
注1:EPD(Environmental Product Declaration):環境製品宣言。製品のライフサイクル全体にわたる環境影響を定量的に算出し、第三者機関が検証した報告書。