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ペロブスカイト太陽電池の設置法改良で軽量化・量産化、積水化学ら4社

建物外壁への設置工法の改良に着手
2025/10/21
(火)

フィルム型ペロブスカイト太陽電池の改良工法を開発へ

 積水化学工業株式会社(以下、積水化学)、積水ソーラーフィルム株式会社(以下、積水ソーラーフィルム)、株式会社NTTデータ(以下、NTTデータ)、日軽エンジニアリング株式会社(以下、日軽エンジニアリング)の4社は、フィルム型ペロブスカイト太陽電池を建物外壁に設置するための改良工法の開発に着手した。これまでの実証で課題となっていた施工性や軽量化、製造コストの解決を図る。2025年10月20日に発表した。

図1 検討中の工法を適用したフィルム型ペロブスカイト太陽電池


積水化学工業株式会社 ニュースリリース 2025年10月20日、「フィルム型ペロブスカイト太陽電池の壁面設置に向けた改良工法開発を開始」

固定金物にアルミ押出形材を活用し大量生産と軽量性を両立

 積水化学とNTTデータは、2023年から、NTT品川TWINS DATA棟で国内初という外壁設置実証を進めてきた。この実証では、フィルム型特有の課題として、施工時のしわ・よれの発生や、設置時間の長さが明らかになった。また、耐風性・耐久性を高めるために固定枠の設計を強化すると重量が増加する課題や、切削加工による固定枠の製造コスト高・長納期といった課題も大規模導入に向け浮き彫りになっていた。

 今回4社が共同で開発する改良工法は、固定金物にアルミ押出形材を活用する。これにより、切削加工と比べて大量生産が可能になるとともに、軽量性も両立するという。さらに、壁面への施工時に発生しやすいフィルム特有のしわ・よれを容易に調整できる工法も併せて検討し、建物の意匠性を確保する。

 4社は開発に向けた実証を、2025年10月から2029年3月にかけて共同で実施する。具体的には、設置方法やモジュール固定方法の確立を目指すとともに、塩害地域での耐久性、都心部建物での施工性、アルミ加工工場での製造性などを検証する。

 2025年度中に、4社は、NTT品川TWINS DATA棟でフィルム型ペロブスカイトの追加設置を行い、施工性や耐久性の検証を進める方針だ。2026年度以降は、NTTデータが保有するデータセンターやオフィス計16棟に導入先を拡大するのに加え、日軽エンジニアリングで製造ラインを構築する計画である。

 各社の役割は、積水化学と積水ソーラーフィルムがモジュールの提供および検討・試験への助言、NTTデータがフィールド提供と設置工事、日軽エンジニアリングが固定金物の設計・試作・助言と生産設計・製造計画の立案を担う。設置方法の検討や性能試験、課題調整は4社共同で行う。

 積水化学によると、都市部では、再生可能エネルギー導入にあたり設置場所や建物荷重の制約が大きく、従来の太陽光パネルでは普及に限界があった。軽量かつ柔軟性の高いフィルム型ペロブスカイト太陽電池は、外壁など既存建物への設置が可能であり、都心部での再エネ地産地消を促進する技術として期待されている。


参考サイト

積水化学工業株式会社 ニュースリリース 2025年10月20日、「フィルム型ペロブスカイト太陽電池の壁面設置に向けた改良工法開発を開始」

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