「多拠点一括エネルギーネットワークサービス」を稼働
日本化薬株式会社(以下、日本化薬)とJFEエンジニアリング株式会社(以下、JFEエンジニアリング)は、大型ガスコージェネレーションシステム(以下、CGS)注1で作った電力を日本化薬グループの国内12拠点に融通する「多拠点一括エネルギーネットワークサービス(JFE-METS)」を2025年4月1日に稼働した。供給対象となる拠点のCO2排出量を約45%削減する見込み。医薬・化学業界での導入は初だという。両社が2025年6月9日に発表した。
図1 日本化薬とJFEエンジニアリングの「多拠点一括エネルギーネットワークサービス(JFE-METS)」の概要
出所 日本化薬株式会社 プレスリリース ニュース、「日本化薬グループ 国内12拠点に電力融通 医薬・化学業界向け初となる 「多拠点一括エネルギーネットワークサービス」稼働開始」
余剰電力を日本化薬の全国12拠点へ供給
JFE-METSは、日本化薬の高崎工場内に新設したCGSの電力と熱を15年間にわたって供給するもの。CGSで発電した電力と発電時に発生する熱は、高崎工場の製造プロセスで活用する。余剰電力は、JFEエンジニアリンググループが管理運営する再生可能エネルギー発電所などで発電した電力と合わせ、送配電ネットワークを通じて、日本化薬グループの工場や研究所など全国12の拠点に供給する。
これにより、拠点ごとにエネルギーを調達する場合と比較し、効率的なエネルギー利用とコスト削減、環境負荷低減につなげる。
高崎工場に新設したCGSは、発電出力が7,800kWと約17,000世帯相当の発電能力を持つ。ガスコージェネレーションシステムのBOS(ブラックアウトスタート)機能注2により、電力系統の停電時にも高崎工場の電力と熱の供給を継続できる。JFEエンジニアリングが建設・運営を支援している。
図2 高崎工場に設置したガスコージェネレーションシステムの外観
出所 日本化薬株式会社 プレスリリース ニュース、「日本化薬グループ 国内12拠点に電力融通 医薬・化学業界向け初となる 「多拠点一括エネルギーネットワークサービス」稼働開始」
CO2排出量45%削減とレジリエンス強化を両立
日本化薬グループは、2050年のカーボンニュートラル実現に向け、事業活動で排出する温室効果ガス(Scope 1、2)注3を2030年度までに2019年度比で46%削減する中期環境目標を掲げている。本サービスの導入により、供給対象となる拠点のCO2排出量を約45%(2023年度比)、高崎工場のエネルギー使用量を約18%(2021年度比)削減できると見込む。
日本化薬株式会社 執行役員 テクノロジー統括RC・技術統括部 部長 三浦 昭彦 氏は、「日本化薬グループでは、『生命と健康を守り、豊かな暮らしを支える』持続可能な社会の実現に向けた取り組みの一環として、本サービスを導入した。この導入により、エネルギーの効率的な利用とCO2排出量の削減を両立し、環境負荷の低減と安定的な生産活動の両面で大きな効果が期待される」と強調する。
注1:ガスコージェネレーションシステム(CGS):ガスを燃料に作り出した電気と発電時に発生した熱を利用するためのシステム。
注2:BOS(ブラックアウトスタート):系統(電力会社の送配電網)が停電した状態(ブラックアウト)から、外部電源に頼らずに発電設備を起動し、電力を供給する機能。
注3:Scope 1、2:事業者が自ら排出する温室効果ガス(Scope 1)と、他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出(Scope 2)のこと。
参考サイト
日本化薬株式会社 プレスリリース ニュース、「日本化薬グループ 国内12拠点に電力融通 医薬・化学業界向け初となる 「多拠点一括エネルギーネットワークサービス」稼働開始」
JFEエンジニアリング株式会社 ニュースリリース 2025年6月9日、「日本化薬グループ 国内12拠点に電力融通 医薬・化学業界向け初となる 「多拠点一括エネルギーネットワークサービス」稼働開始」