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AI技術で電力需給管理を自動化、京セラ

「AEMS需給管理システム」を開発
2025/07/04
(金)

電力の需給管理を自動化

 京セラ株式会社(以下、京セラ)は、電力の需給管理を自動化するためのシステム「AEMS需給管理システム」を開発した(図1)。計画作成プロセスの自動化やAI(人工知能)技術を活用した需要予測により、需給管理の効率化・高度化につなげるという。地域新電力会社などの小売電気事業者に向けに提供する。2025年7月2日に発表した。

図1 AEMS需給管理システムの予測イメージ

出所 京セラ株式会社 ニュースリリース 2025年7月2日、「京セラ、AIにより高精度な予測を実現する「AEMS需給管理システム」を開発」

電力需要・市場価格・インバランス料金を予測

 小売電気事業者は、電力の需要と供給のバランスを適切に管理するため、需要予測や調達・販売計画を電力広域的運営推進機関(OCCTO)に提出する必要がある。従来は、過去の実績データや担当者の経験に基づき計画を立案するのが一般的だった。

 AEMS需給管理システムは、これらの計画を作成するためのプロセスを自動化する。

 過去データ・気象予測・エリア需給情報をもとに、電力需要に加えて市場価格や計画と実績に差分が生じたときに発生するペナルティ(インバランス料金)を予測する。これにより、市場変動に柔軟に対応できるようにするとともに、電力調達コストの最適化とインバランスリスクの低減を図る。

 需要計画や電力使用実績などをグラフで表示するなど、データを可視化する。販売単価などの情報を事前に設定すれば、日々の収支の概算をリアルタイムで確認できる(図2)。

図2 需給管理システム画面

出所 京セラ株式会社 ニュースリリース 2025年7月2日、「京セラ、AIにより高精度な予測を実現する「AEMS需給管理システム」を開発」

 京セラはこれまで、自己託送やマイクログリッド、VPP(仮想発電所)などの実証を実施してきた。こうした知見を活用し、地域や事業者ごとの運用形態に合わせたオプションの提案にも対応する。

 2024年7月には、AEMS需給管理システムを地域新電力会社の青森県民エナジーに先行導入した。同社は、操作の自動化と京セラのサポート体制により、専任担当者を置かずに安定した運用が可能になったという。

 今後、太陽光などの再生可能エネルギー発電事業者向けに、発電出力の予測や計画作成を支援する機能の拡充を予定している。また、蓄電池を活用した電力の最適なタイミングでの放電・充電といった制御機能も検討する。

 京セラによれば、小売電気事業は、電力需要と供給のバランスを正確に見極める精緻な予測をはじめ、電力市場価格の変動への的確な対応や、天候・需給状況の変化に応じたリアルタイムな調整など、高度かつ複雑な業務が求められる。特に再生可能エネルギーを活用する際は、地域に点在する小規模な発電所の取りまとめや、天候による発電量の変動もあり、さらに精密な管理が必要になる。また、今後は発電した電力を市場に販売するFIP制度が主流となり、発電量の予測と需要に応じた供給計画が必要になる。


参考サイト

京セラ株式会社 ニュースリリース 2025年7月2日、「京セラ、AIにより高精度な予測を実現する「AEMS需給管理システム」を開発」

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