EV蓄電池の二次劣化を診断
大阪ガス株式会社(以下、大阪ガス)と、その100%子会社である株式会社KRI(以下、KRI)は、電気自動車(EV)などに搭載されたリチウムイオン蓄電池の急激な容量低下を引き起こす「二次劣化」注1を診断する技術を開発した(図1)。将来的に、同技術を活用し、従来は困難だった中古EVの評価を支援するサービスを外販することで、EV関連領域での事業拡大を図る。2025年10月15日に発表した。
図1 大阪ガスとKRIが開発したEV蓄電池の診断技術の概要
出所 大阪ガス株式会社 プレスリリース 2025年10月15日、「EV蓄電池の急激な容量低下(二次劣化)の診断に関する新技術を開発」
中古EVの価値評価支援サービスの外販を計画
今回、大阪ガスとKRIが開発した技術は、二次劣化の兆候の有無を、短時間の充電から得られる限られたデータなどをもとに、その場で診断するためのもので、業界初だという。開発には、KRIが蓄電池を分析・評価する中で得た、充放電反応が偏る「反応偏在」注2などによる二次劣化のメカニズムに関する知見を活用した(図2)。蓄電池は、使用に応じて徐々に容量が低下する「一次劣化」の過程で、反応障害物が蓄積して反応偏在が発生する。反応偏在が生じると、急激な容量低下を引き起こす二次劣化が発生することがある。
図2 本技術による二次劣化の兆候有無の診断および二次劣化メカニズム例について
出所 大阪ガス株式会社 プレスリリース 2025年10月15日、「EV蓄電池の急激な容量低下(二次劣化)の診断に関する新技術を開発」
今後、大阪ガスは、同技術の実用化を進め、EV関連事業者と連携しながら、中古EVの適正な価値評価を支援するサービスを外販する計画だ。また、Daigasグループとしては、同技術のほかにも複数の蓄電池診断技術を保有しており、これらを活用してEV関連事業のみならず、定置用蓄電池分野など、蓄電池を利用する幅広い事業へのサービス提供にも取り組む方針である。
大阪ガスによると、EVは、搭載されている蓄電池の劣化状態の評価が難しい。特に中古車は使用履歴が十分に把握できないケースが多く、性能低下や容量減少に対する不安が、適正な価格査定を困難にしている。
注1:二次劣化:リチウムイオン蓄電池が充放電を繰り返した経年時に、劣化のメカニズムが変化することで、容量が急激に低下する現象。使用回数や時間に応じて徐々に容量が低下する「一次劣化」とは区別される。
注2:反応偏在:蓄電池の内部で、リチウムイオンの移動や化学反応が不均一に発生する状態のこと。これが進行すると、特定の箇所に負荷が集中し、電池の劣化を加速させる一因となる。
参考サイト
大阪ガス株式会社 プレスリリース 2025年10月15日、「EV蓄電池の急激な容量低下(二次劣化)の診断に関する新技術を開発」