CO₂分離膜の量産化技術を開発
TOPPANホールディングス株式会社(以下、TOPPANホールディングス)と株式会社OOYOO(以下、OOYOO)は、工場などから排出されるCO₂を省エネルギーで分離回収する二酸化炭素(CO₂)分離膜の量産化技術を共同で開発した。両社は開発した分離膜を搭載した装置の実証実験を2025年10月に開始する。2025年10月10日に発表した。
熱を使わずに省エネルギーでCO₂を分離
TOPPANホールディングスは、同社がフィルム製造などで蓄積した表面加工技術・製造を活用し、OOYOOが開発したCO₂と窒素(N₂)を分離するためのCO₂分離膜を量産化するため、基本合意契約を2023年12月に締結して共同開発を続けている。両社が開発を進める膜分離法注1は、熱を使わずにCO₂を分離するため、省スペースかつ低エネルギーでの運転が可能であり、幅広い産業分野に導入できるという。従来のCO₂分離回収技術は、化学吸収法が主流で多量の熱エネルギーを要するため、コストが高く、大規模な設備も必要となる点が課題だった。
今回開発したCO₂分離回収装置は、工場などからの排ガスやプロセスガスに含まれるCO₂を分離回収するためのもので、1日当たり100kgのCO₂を回収する。
同装置の実証実験を、2025年10月からTOPPANホールディングス総合研究所(埼玉県杉戸町)で開始する。実証では、同研究所に設置されたガスボイラーから発生する排ガスを対象とし、CO₂の回収純度や回収率、連続運転による性能の安定性を検証する。特に中小規模の工場におけるCO₂排出削減への適用可能性を確認するとともに、大規模産業工場などへのスケールアップに向けたエンジニアリングデータを蓄積することを目的としている。TOPPANホールディングスはCO₂分離膜の製造を、OOYOOは装置の設置・運転とデータ分析をそれぞれ担当する。
今後、TOPPANホールディングスとOOYOOは、実証実験を通じて分離膜やモジュール、装置全体の技術向上を図る。また、小規模から大規模まで多様なCO₂排出源に対応する技術を確立し、CO₂分離膜事業を2030年までに開始する計画である。
TOPPANホールディングスによれば、2050年のカーボンニュートラル達成に向け、工場などの排出ガスからCO₂を分離・回収・利用・貯留(CCUS)する技術が不可欠とされている。欧州の排出量取引制度(EU-ETS)注2や日本のGX推進法注3などを背景に、CCUSの事業化が世界的に進んでいる。
注1:膜分離法:特定の物質を選択的に透過させる薄膜を利用し、混合ガスの中からCO₂などの目的物質を分離する技術。
注2:EU-ETS:EU(欧州連合)が取り組む温室効果ガス(GHG)排出量に価格を付け、取引可能にする制度。
注3:GX推進法:「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律」の通称。GX(グリーントランスフォーメーション)実現に向け、GX経済移行債の発行やカーボンプライシングの導入などを通じ、官民の投資を促進することを目的とする法律。