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[ニュース]

JERA、東京湾初となる石炭火力でCO2分離・回収設備導入へ

川崎重工と火力発電のCO2を有効利用するための共同実証
2025/06/25
(水)

2030年度までにCO2分離・回収設備を横須賀火力発電所に設置

 株式会社JERA(以下、JERA)は、火力発電が排出するCO2を分離・回収、有効利用するための実証に向け、2030年度までにCO2分離・回収設備を横須賀火力発電所に設置する(図1)。実証は、川崎重工業株式会社(以下、川崎重工)と共同で実施する。両社は横須賀火力発電所(神奈川県横須賀市久里浜)でのCCUS(Carbon dioxide Capture and Storage:二酸化炭素回収・貯留)バリューチェーン構築を共同検討するための覚書を2025年6月19日に締結した。CO2分離・回収設備の設置は、この締結に基づいたもの。東京湾の石炭火力発電所に、CO2分離・回収設備を設置するのは初だという。同日発表した。

図1 JERAと川崎重工によるCCUSバリューチェーンのイメージ

出所 株式会社JERA プレスリリース 2025年6月19日、「東京湾の石炭火力発電所で初となるCO2分離」

 JERA子会社のJERAパワー横須賀合同会社が運営する横須賀火力発電所では、川崎重工製のCO2分離・回収設備をパイロットスケールで設置する。実証では、同設備を活用し、火力発電によって排出される排ガスに含まれるCO2を分離・回収し、回収したCO2の一部を貯蔵するとともに、高濃度CO2を藻類の培養やセメントの生成、園芸利用などに有効利用する。

 JERAは、国内の石炭火力について、碧南火力発電所4号機で世界初という大型商用石炭火力実機でのアンモニア20%転換実証試験に成功したと2024年に発表した。これを踏まえ、非効率な石炭火力の不需要期における稼働抑制や2030年度までの全台停廃止、高効率な石炭火力の燃料アンモニアへの転換や専焼化、国内および海外CCUSなどの検討を進めている。

 川崎重工は、固体吸収剤で排ガス中のCO2を吸収し、60度の低温蒸気を吹き込んでCO2を回収するCO2分離・回収技術(Kawasaki CO2 Capture: KCC)を開発している(図2)。同技術は発電所や産業プラントなどの廃熱を利用して蒸気を生成することで、CO2分離・回収コストを低減するという。CO2分離・回収試験を複数の石炭火力発電所で実施している。

図2 川崎重工のCO2分離・回収技術(Kawasaki CO2 Capture: KCC)を活用したCO2分離・回収イメージ

出所 株式会社JERA プレスリリース 2025年6月19日、「東京湾の石炭火力発電所で初となるCO2分離」

 今後、JERAと川崎重工は、今回の覚書に基づいてCCUSの社会実装に向けた取り組みを進める。


参考サイト

株式会社JERA プレスリリース 2025年6月19日、「東京湾の石炭火力発電所で初となるCO2分離」

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