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環境省ら、GHGと水循環の観測衛星を搭載したロケット打ち上げに成功

国・地域に加え企業単位のGHG排出量推計も可能に
2025/07/01
(火)

温室効果ガス(GHG)と海水温などの水循環を観測

 環境省、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(以下、JAXA)らは2025年6月29日、温室効果ガス(GHG)と海水温などの水循環を観測するための衛星「いぶきGW(Global Observing SATellite for Greenhouse gases and Water cycle:GOSAT-GW)」を搭載したH-IIAロケット50号機の打ち上げに成功した。同衛星は、2009年に打ち上げた「いぶき」、2018年の「いぶき2号」の後継機で、従来よりも詳細にGHG排出源を特定できるほか、新たに大気汚染物質の観測も可能になったという。環境省が同日に発表した。

国・地域に加え企業単位のGHG排出量推計も可能に

 いぶきGWは、水循環変動と温室効果ガスを観測するための衛星。環境省、文部科学省、JAXA、国立研究開発法人国立環境研究所(以下、NIES)が共同で開発した。

図1 「いぶきGW(Global Observing SATellite for Greenhouse gases and Water cycle:GOSAT-GW)」の形状や搭載センサのイメージ

出所 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 サテナビ、「GOSAT-GW」

 観測のため、(1)「温室効果ガス観測センサ3型(Total Anthropogenic and Natural emissions mapping SpectrOmeter-3: TANSO-3」、(2)「高性能マイクロ波放射計(Advanced Microwave Scanning Radiometer 3: AMSR3)」の2つを搭載している。

 TANSO-3は、センサを回折格子型分光方式に変更したことにより、既存衛星に搭載されているセンサと比べ、温室効果ガスの二酸化炭素(CO2)やメタン(CH4)などを空間的に詳細化して観測できる。また、大気汚染物質の二酸化窒素(NO2)の観測も可能になった。これらを観測し、二酸化炭素の全大気月別平均濃度の監視、国別での人為起源の温室効果ガス排出量の検証、都市圏、発電所、永久凍土といった温室効果ガスの大規模排出源のモニタリングなどを実行する。

 AMSR3は、地表や海面、大気などから自然に放射されるマイクロ波を観測する。それらのデータを気象予測業務、海象・気象情報サービス、航行支援などに活用する。

 浅尾 慶一郎環境大臣は、「GOSAT-GWは、現在運用中のGOSAT及びGOSAT-2と比較して、データ数が大幅に増加し、二酸化炭素やメタンの排出量をより精密に推計できるようになった。これにより、これまでデータ不足により十分な解析が困難だった、面積が小さい国・地域の排出量推計に加え、企業単位での推計も可能とすることを目指す。環境省としては、GOSAT-GWによって得られるデータを国際機関、各国政府、民間企業などに広く活用してもらい、国内外の排出削減のための行動を後押しする」と説明する。


参考サイト

環境省 報道発表 2025年6月29日、「温室効果ガス・水循環観測技術衛星(GOSAT-GW)の打上げ結果について」

国立研究開発法人国立環境研究所 GOSAT-GW、「GOSAT-GWについて」

出所 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 サテナビ、「GOSAT-GW」

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