不動産業界初となる地熱発電のオフサイトPPA
東京建物株式会社(以下、東京建物)と日鉄エンジニアリング株式会社(以下、日鉄エンジニアリング)、九電みらいエナジー株式会社(以下、九電みらいエナジー)の3社は、遠隔地の地熱発電を活用したオフサイトコーポレートPPA(Power Purchase Agreement:電力購入契約)注1を、東京建物が所有・管理する都内のオフィスビルに導入した。ビルの再生可能エネルギー自給率を高めるとともに、都心部における再生可能エネルギーの調達という課題の解消につなげるという。地熱発電を用いたオフサイトコーポレートPPAの導入は、不動産業界で初だという。2025年6月5日に発表した。
図1 地熱発電所(九電みらいエナジー八丁原発電所)と供給先ビルの一例(東京建物八重洲ビル)
出所 東京建物株式会社 ニュース 2025年6月5日、「地熱発電を用いたオフサイトコーポレートPPAを東京都内のオフィスビルに導入」
安定電源の地熱をベース電力として活用
地熱発電は、天候や時間帯に左右されず24時間365日安定した発電が可能であり、設備利用率注2が82%と他の再生可能エネルギーと比較して高いという。今回の取り組みでは、この安定供給性に着目し、地熱発電をオフィスビルのベース電力として活用する。
電力使用量が大きい日中は地熱発電に加えて太陽光発電などを組み合わせて利用し、減少する夜間は電力使用量の大半を地熱発電で賄う。さらに、再生可能エネルギーだけでは不足する分については、非化石証書が付与された電力を受電する計画だ。これにより、ビル全体の再生可能エネルギー自給率を高めるという。
再エネを確保しづらい都心部へ九州から供給
都心部は、太陽光パネルの設置場所が限られており、脱炭素の取り組みを進める上で課題になっているという。本スキームでは、九電みらいエナジーが所有する九州地方の地熱発電所4カ所(八丁原発電所、滝上発電所、山川発電所、大霧発電所)で発電した再生可能エネルギー電力を、小売電気事業者である日鉄エンジニアリングを通じて、東京建物が所有・管理する都内のオフィスビル3棟(東京建物八重洲ビル、東京建物八重洲さくら通りビル、大崎センタービル)へ供給する。
図2 導入スキームの全体イメージ
出所 東京建物株式会社 ニュース 2025年6月5日、「地熱発電を用いたオフサイトコーポレートPPAを東京都内のオフィスビルに導入」
これにより、対象ビルは年間で約900MWhの再生可能エネルギー電力の供給を受ける見込みである。これは、年間で約360トンの二酸化炭素(CO2)排出量削減注3に相当し、杉の木約26,000本が1年間に吸収する量に匹敵するという。
導入対象の1つである東京建物八重洲ビルでは、これまでも自己託送や非化石証書の活用により再生可能エネルギー導入率100%を達成していた。今回の地熱電力の導入により、再生可能エネルギー自給率が従来の約19%から約27%まで向上する見通しだ。
注1:コーポレートPPA(Power Purchase Agreement):企業が発電事業者から再生可能エネルギー電力を購入するための契約。
注2:設備利用率:発電設備の定格出力に対し、実際にどれだけ発電したかを示す割合。
注3:CO2削減効果:林野庁「建築物に利用した木材に係る炭素貯蔵量の表示に関するガイドライン」に基づき算出。
★参考サイト★
東京建物株式会社 ニュース 2025年6月5日、「地熱発電を用いたオフサイトコーポレートPPAを東京都内のオフィスビルに導入」