工場で直流マイクログリッドシステムの実証
ダイハツ工業株式会社(以下、ダイハツ)、株式会社豊田中央研究所(以下、豊田中研)、トヨタ自動車九州株式会社(以下、トヨタ九州)のトヨタグループ3社は、再生可能エネルギー(再エネ)を工場内で活用するためのマイクログリッドシステムの実証実験を2025年10月に開始した(図1)。直流主体のシステムを構築し、従来の交流主体システムに比べエネルギーロスを約45%削減するという。ダイハツ工業が2025年10月7日に発表した。
図1 ダイハツと豊田中研、トヨタ九州が構築するマイクログリッドシステムのイメージ
出所 ダイハツ工業株式会社 プレスリリース 2025年10月7日、「ダイハツ、豊田中研、トヨタ九州のトヨタグループ3社が連携し、再生可能エネルギーを活用したマイクログリッドシステムの実証実験を開始」
トヨタグループ内の高効率電力変換器と蓄電池の知見を組み合わせ開発
ダイハツと豊田中研は、再エネの地産地消に有効なマイクログリッドに着目し、電力変換時のエネルギー損失を最小化するための高効率電力変換器「SPH」注1を共同開発し、ダイハツ社内で技術検証を実施してきた。その実用化には、大規模な利用環境での有効性と信頼性を検証する必要があった。
トヨタ九州は、太陽光発電によるグリーン水素の製造や、ハイブリッド車のリユースバッテリーを活用した蓄電池「KRe:Ba」注2の実証など、再エネの活用を進めてきた。電力変換のさらなる効率化と運用の安定化が課題となっていた。
今回の実証実験では、トヨタ九州・小倉工場でSPHを活用し、マイクログリッドシステムを構築する。SPHは、「発電」「蓄電」「使用」の3ポートを持ち、太陽光で発電した電力を直流のまま部品製造ラインに供給し、余剰分を蓄電池に貯めることを可能にする。
従来の交流主体のシステムでは、直流の太陽光発電を一度交流に変換し、使用時に再度直流へ変換するなどの過程で電力損失が発生していた。3社のシステムでは直流のまま電力を融通するため、直流・交流の変換回数が減り、エネルギーロスを約45%削減するという。
さらに、1秒間に1000回以上の超高速制御により、天候不順で発電量が低下した際にも蓄電池から瞬時に電力を補給。これにより、生産活動の停止やデータ損失につながる瞬間的な電力供給の途絶リスクを回避するという。
稼働している製造ラインでの実証を通じ、システムの有効性や信頼性を確認する。将来的には、エネルギーの地産地消や、日中に蓄電した電気を夜間に使用するピークシフトにつなげる。
また、SPHは小型電動車用のインバータといった既存の自動車用部品を改良して活用することで、低コスト化とコンパクト化を両立しているとし、こうした特徴を生かして大規模工場だけでなく、小規模な事業所への導入も視野に入れる。ダイハツ 代表取締役副社長 桑田 正規 氏は、「今回の実験で培った再エネ活用のノウハウを、将来的には他の工場や店舗などの小規模な事業所などへ横展することも視野に入れ、カーボンニュートラルの実現に向けた活動を進める」と展望を明かす。
注1:Smart Power Hub(SPH):ダイハツと豊田中研が共同開発した高効率な3ポート電力変換器。電動車開発で培われたパワーエレクトロニクス技術を応用している。
注2:KRe:Ba:トヨタ自動車九州・小倉工場の「K」と、リユースバッテリーを略した「Re:Ba」を組み合わせた造語。自動車やフォークリフトなどの中古電池を組み合わせた蓄電池システムを指す。
参考サイト
ダイハツ工業株式会社 プレスリリース 2025年10月7日、「ダイハツ、豊田中研、トヨタ九州のトヨタグループ3社が連携し、再生可能エネルギーを活用したマイクログリッドシステムの実証実験を開始」