メガワット級のPCSを共同試作するため協定締結
三菱電機株式会社(以下、三菱電機)は、台湾の同社販売会社である台湾三菱電機股份有限公司(以下、台湾三菱電機)、台湾の財団法人工業技術研究院(以下、ITRI)と、再生可能エネルギーを利用して発電する電力を効率的に変換する電力変換システム(PCS:Power Conversion System、注1)を共同で試作する。そのために、技術提携の基本協定を締結した。メガワット級の試作機を用いた実証実験を実施し、その結果を顧客などに共有することでPCSの普及拡大へとつなげるのが狙い。2025年10月15日に発表した。
実証結果を顧客や台湾PCSメーカーに共有
世界では、太陽光や風力といった再エネ発電システムの導入が進む中で、同システムで発電した直流電力を送配電網で利用できるよう、交流電力に変換するPCSの需要も拡大している。特に、メガソーラーのような大規模発電システムでは、大容量の電力を高効率に変換するメガワット級のPCSが不可欠となっており、その技術開発と普及が課題になっているという。
これまで、三菱電機は、再エネを利用した発電・蓄電・送配電システムのPCSで使用するパワー半導体(注2)向けのモジュールを提供してきた。また、ITRIは、世界有数の応用研究機関であり、大容量電力を使用する発電・蓄電・送配電システムを構築する技術に関する知見を保有する。
今回の基本協定にもとづき、3社は各社の知見を活用し、メガワット級PCSの共同試作と実証実験に取り組む。具体的には、三菱電機はパワー半導体モジュールを、ITRIは大容量の電力システムを構築するための技術と知見を、台湾三菱電機は台湾市場におけるマーケティングの知見を提供する。
実証後、三菱電機と台湾三菱電機は、パワー半導体モジュールを使用したPCSの設計情報や実証実験結果を顧客に提供する。これにより、PCS向けパワー半導体モジュール事業の拡大を進める。ITRIは、PCSの構築に関する設計書、実証実験の結果を台湾のPCSメーカーへ提供し、関連企業の製品開発を支援する。
ITRI 副院長 胡 竹生 氏は、「台湾および世界が積極的に脱炭素社会への移行を進める中、電源構成が急速に変化している。将来的には電力網が再生可能エネルギーの普及に対応するだけでなく、安定性・強靭性・信頼性も確保することが求められる。次世代の電力変換技術を通じ、グリーンエネルギーを効率的に統合し産業発展を支えることが、エネルギー転換における重要な課題になっている」と協業の背景を説明する。
三菱電機 上席執行役員および半導体・デバイス事業本部長 竹見 政義 氏は、「当社の高効率パワー半導体技術とITRIのシステム化の知見と強みを融合させることで、当社のパワー半導体を含むメガワット級電力変換システムを革新し、持続可能なエネルギー社会の構築を進める」と強調する。
注1:電力変換システム(PCS:Power Conversion System):太陽光発電などの直流電力を、家庭や工場、送配電網などで使われる交流電力に変換する装置。
注2:パワー半導体:モーターや発電機、電源装置などで、電力の制御や変換を行う半導体デバイス。省エネルギー化に不可欠な電子部品。
参考サイト
三菱電機株式会社 ニュースリリース 2025年10月15日、「台湾ITRIとパワー半導体を用いた大容量電力変換システムの技術提携に関する基本協定を締結」